万葉集

独占欲と愛情が滲む1300年前の恋|万葉集・大伴旅人の和歌を現代語訳で読む

独占欲と愛情が滲む万葉集の恋
koiwaka

原文

愛しき 人のまきてし
敷栲の 我が手枕を
まく人あらめや

現代語訳

あの人が、
眠るときにそっと置いた
僕の手。

その温もりを、
他の誰かが
同じように受け取るなんて、
そんなこと、あるわけがない。

背景・登場人物

この歌を詠んだのは、大伴旅人
万葉集を代表する歌人であり、
知性と感情のバランスに優れた人物だ。

この和歌は、
派手な恋や情熱ではなく、
日常の中にある「静かな愛」を切り取っている。

手枕という、
ごくささやかな接触に込められた
深い独占と信頼。
それが、この歌の核心だ。

解説(心理 × 和歌構造)

この和歌の強さは、
感情を大きく語らないところにある。

○和歌構造

「敷栲(しきたえ)」は、
白く柔らかな布を表す枕詞。
触感・温度・距離感を一瞬で想像させる。

その上で出てくるのが、
「我が手枕」だ。

物でも言葉でもなく、
自分の身体そのものを差し出す表現だ。

○恋愛心理

これは支配ではなく、
「選ばれている」という確信。

愛されているからこそ、
奪われる不安がない。
だからこそ生まれる、
静かな独占欲。

声高に叫ばない恋ほど、
実は一番、強い。

恋の指針(1行で刺す)

愛は、奪おうとしないときにいちばん深くなる。

Q
真面目な解説

「愛し」は親が子を、夫婦がお互いをいとしいと思う気持ちをいう。
「敷栲の」は「枕・手本・袖・床」などにかかる枕詞。
大伴旅人の妻大伴郎女は、筑紫に赴任してまもない初夏のころ病死した。その時旅人は六十四歳だった。この歌は左注によれば四十九日をすませたころのものらしい。
二年後の十二月、旅人は大納言となり、帰京することになった。その時詠んだ歌が続いて載る。

引用:角川書店編『ビギナーズ・クラシック 日本の古典 万葉集』(KADOKAWA、2001年)

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編集長
『恋愛和歌集』編集長。
中央大学文学部卒。
みなさんの恋愛が、うまくいきますように。
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